ワンちゃんも人間同様、歳をとると様々な病気がでてきます。中でも、僧帽弁閉鎖不全症は、ワンちゃんの心臓病の中で最も多い病気です。
心臓は右心房、右心室、左心房、左心室と4つの部屋からできており、それぞれの間には、血液が一定方向のみに流れるよう、逆流防止弁がついています。左心房と左心室の間にあるのが僧帽弁と呼ばれる弁で、これがうまく働かなくなると弁の隙間から逆流が生じ、僧帽弁閉鎖不全症となります。
症状
初期にははっきりとした症状が出ることは少なく、健康診断や聴診などで偶発的に見つかることが多いです。進行するに連れて心不全の兆候(疲れやすい、咳が出る、突然倒れることがある、など)が出てきます。さらに悪化すると、肺に水分が染み出して肺水腫という状態になり、呼吸が荒い、舌が青紫になる、鼻や口から血混じりのものがでるなどの症状がでます。この状態では酸素が十分に体内に取り込めず溺れているのと同じ状態になるため、大変危険な状態であり、緊急処置が必要となります。
僧帽弁閉鎖不全症は、進行度によって下記のようなステージに分けられます。
ステージ | 心臓の状態 | 症状 |
A |
今後心臓病を発症しやすい犬種 (キャバリア、チワワ、マルチーズ、ヨークシャーテリアなど) |
なし |
B1 | 心雑音はあるが、心拡大はみられない | なし |
B2 | 心雑音があり、心拡大がみられる | 咳がみられることがある |
C | 心不全の症状がでている | 咳がよくみられ、疲れやすい、失神などがでる |
D | 重度の心不全があり、内服で抑えきれない | 酸素吸入、入院治療が必要 |
心臓の悪化のスピードは個人差があり、初期のままゆっくりと経過するものから、1−2ヶ月で急速に悪化するものまで様々であり、定期的な診察が重要となります。
検査
今現在どの程度心臓が悪いのかを把握しステージ分類をしたり、経過を観察するために、レントゲン検査や超音波検査を行います。
追加で血液検査を行うこともあります。特に超音波検査は、動いている心臓をリアルタイムで観察できるため、非常に有用な検査となります。
治療
一度悪くなってしまった心臓は一般に治ることはなく、投薬でなるべく進行を遅らせてあげることが治療の中心となります。
上記のステージB2から治療を始めることが多く、血圧を下げる薬や強心剤、利尿剤などを組み合わせて、その子の心臓のステージにあった治療を行っていきます。
また、運動や興奮を控えたり、心臓用の処方食を食べさせてあげることも検討します。
質問疑問等ございましたら、診察の際お気軽にご相談ください。